名古屋地方裁判所 昭和40年(む)984号 判決 1965年9月28日
被告人 河澄政照 彦坂登
決 定
(被告人氏名略)
右の者に対する頭書被告事件について、名古屋地方裁判所裁判官赤間鎮雄のした各勾留執行停止決定に対し、検察官から適法な準抗告があつたので、当裁判所は併合して次のとおり決定する。
主文
被告人等に対する各勾留執行停止決定は孰れもこれを取消す。
理由
本件申立の要旨は検察官提出の申立書記載のとおりである。
そこで当裁判所は右申立書の当否について判断するに、
一 検察官から提出を求めた本件の捜査記録を精査すると各被告人等は本件犯行について否認しており、またこれまでの捜査の経過に鑑みても本件犯行の性格等から考えて、仮に短期間の釈放といえども罪証隠滅、逃亡のおそれが充分あるものと考えられるばかりでなく将来証人として出廷するであろう関係者に対し暗黙の畏怖を与える結果になることも当然予測されるところである。
尚、原決定には「警察官を同行すること」の一項の条件を加えこれによつて右罪証隠滅、逃亡のおそれを防止しようとする趣旨と考えられるが、勾留執行停止に対し裁判所が適当な条件を付することは出来るであろうが、本来、この条件は被告人がその条件を遵守するかしないかが被告人の自由意思によつて決定し得られる事項のものでなければならないと考えられるところ、この意味において、この条件は勾留執行停止の条件として適法なものでなく仮に広い意味においてこのような条件を付し得るとしても団員が多衆集合する解散式に出席する各被告人等に対しその同行警察官の数、同行計画等を前以て予定してこれを行うことは困難であろうし不慮の事態が発生した場合は所期の目的である罪証隠滅、逃亡のおそれを防止するに万全を期することができないものと考える。
二 本件勾留執行停止の目的が、弁護人ら主張のように愛豊親和会の解散式に出席するためであり、原決定もこの趣旨によりこれを認容したものと思われるが、勿論愛豊親和会の如き暴力団体が時勢の赴くところその解散の挙に出でたことは歓迎すべきことである、然し乍ら前述の如き状況にある被告人等を右解散式出席の一事のために釈放することは必ずしも適当でなく、また、被告人等が是非ともこれに列席しなければ解散式本来の目的を達成するのに著しき支障を来すものと思われる資料にも乏しく結局原決定は不適当であることに帰するから刑事訴訟法四三二条、四二六条に従い、原決定を取消すこととし主文のとおり決定する。
(裁判官 野村忠治 水谷富茂人 郡司宏)